食べ物もここまでくると、もうほとんど “ミクロの決死圏” である。
赤ん坊のころ、ヒトの体内にいるのはほぼ100%がビフィズス菌。あ、ビフィズス菌は乳酸菌ではないからご注意。乳酸をつくるから、いちおう乳酸菌の仲間ということになっているが別物。
その後、いろんな食べ物を食べることによって、食べ物に付着している乳酸菌が体内へ侵入。胃酸や胆汁なんかの攻撃をくぐり抜けて無事に腸管へたどりついたヤツらだけが定住し繁殖。多種多様なコロニーを形成していくのである。
これがいま、われわれの腹のなかにいる善玉菌と呼ばれる連中だ。腸内細菌叢、というコムズカシイ言い方もある。
このウソみたいな連中の好物は、人間とほぼ同じ。糖質中心にたんぱく質や脂質、ビタミンなんかを選り好みなしに食べる。哺乳動物の乳から野菜、果物までなんにでも寄ってくるのだ。だから食べ物は暖かい場所で自然発酵する。乳酸菌の働きだ。乳酸菌は、25~30度でどんどん増殖する。
ここまでの話を娘に聞かせると、ウソーン、と叫んで絶句。
気持ちわるーい、だって。
気持ち悪いなんてとんでもない。なにしろ、乳酸菌はこんなにエラいんだゾ。
- 悪玉菌の増殖をとめる。
- 腸管粘膜を刺激して、免疫力を高めてくれる。
- 過剰な免疫反応(アレルギー)を鎮めてくれる。
こういうことは科学者が解きあかしている。
それだけでない。乳酸菌が食べ物を食べてつくる乳酸のおかげで、食べ物は保存食に早変わりする。韓国のキムチやドイツのザワークラウト、ヨーロッパのヨーグルト、チーズなんてのは各国を代表する保存食。乳酸の酸味でどれもすっぱいが、あれが雑菌の繁殖を防ぐ、とこういうわけなンである。
そんな乳酸菌がたっぷり潜んでいるのがぬか床。
熟成したぬか床には10種以上の菌が1gあたり10億もいて、こいつはヨーグルト以上。酸味もヨーグルト以上。しかも、ヨーグルトやチーズなどにいる動物性乳酸菌より胃酸や胆汁に強くてたくましいもンだから、生きたまま腸まで入りこんで定着してくれる。
だから、ぬか漬けを毎日食べているだけで、善玉菌が増えて悪玉菌が減り、免疫力はアップし、花粉症などのアレルギー症状まで軽減するという寸法。
それと同時に野菜不足も解消する。現代人はまるきり食物繊維の摂取量が足りていないが、ぬか漬けなら食物繊維がたっぷりとれる。理由ははっきりしている。
水分が抜けて、かさが減っているから、たくさん食べられるのだ。サラダを食うよりよほど効率がいい。ぬか床の塩分と風味が染みこんでいるから、サラダのようにマヨネーズやらドレッシングをかける必要なんてない。ぬか床から出てきた野菜は、ビタミンが何倍にも増えていることもわかっている。
ぬか床とつきあうようになって、わたしの食に関する世界観は揺らいだね。