おいしいぬか漬けを食べるには、ぬか床の材料を用意してかき混ぜ、1週間ほど寝かして熟成させて……とわりあい手間がかかるもの。
興味はあるけれどなんだか面倒、すぐ食べたいし、というのなら、スーパーの野菜コーナーでぬか漬けを買ってくるのが、いちばん手っとり早い方法だろう。
しかしああいうものには、高確率で食品添加物が入っている。実際、家の近所の4軒のスーパーマーケットで、アリンコのように小さい原材料表示の文字をためつすがめつ確認したところ、じつに3軒で「アミノ酸」(化学調味料だ)の文字を発見。「pH調整剤」入りのものもあった。
こうなると、せっかくの健康食品も形なし台なしである。
そこで健康志向の物ぐさ諸氏におすすめなのが、熟成ずみのぬか床である。ぬか漬けが手軽に手づくりできるもので、「ぬか床の材料」でもいくつか紹介しているが、ここでピックアップする「国産熟成ぬか床セット」はもっと楽ちん。
国産熟成ぬか床セットは、初心者向け
容器さえ必要なく、買ったその日に野菜を漬けこみ、翌日には食卓にならんでいるという造作のなさ。「あたし、物ぐさなうえに飽き性やからね。続けられるかどうか自信があらへんのや」なんていう御仁にはうってつけだ。
原材料はむろん、すべて国産だ。
「混合ぬか」にはぬか床づくりに必要なもの(米ぬか、塩、昆布、しいたけ、唐辛子)が一式入っており、これに「天然酵母」がついてくる。この天然酵母を投入することで、ふつうのぬか床の240倍ほどの酵母密度となる。だから捨て漬けなしでも、すぐ漬け物ができあがるという仕掛け。
ひとつ欠点を挙げるなら、1か月しか使えないところかもしれない(説明文にそう書いてある)。
たぶん毎日野菜を漬けていると、ぬかの量が減ってくるからだろう。足しぬかをしてやれば2か月でも3か月でも使えそうだが、1か月もきちんとぬか床の世話ができたのならもう自信をもっていい。そのときこそ、ぬか床専用容器を導入する好機到来である。
その折、このぬか床をそのまま新しい容器へ移動させてやれば、ぬか床をイチから育てる手間もいらぬ。
国産熟成ぬか床セットの使い方
というわけで、「国産熟成ぬか床セット」の使い方というか、漬け方をざっと解説しておく。
用意するのは、たったこれだけ。
- 国産熟成ぬか床セット
- 水250ml
1.専用のジッパー袋(同梱)に混合ぬか(炒りぬか、塩、こんぶ、しいたけ、唐辛子のセット300g)と水250mlを入れてやる。 | 2.混ぜあわせる。米ぬかのこうばしいにおいを堪能。袋の口を開放して混ぜていたら、空気とともにぬかがぶわっと噴出。注意されたし。 |
3.みかんを食べて育った天然酵母を追加。さらにもむ。マフィンのような甘い香りがしたので、欲求にあらがえずちょっと口に入れてみた。もちろんマフィンではなかった。 | 4.野菜を入れ、ぬか床に埋める。空気を抜いて、ジッパーを閉じる。最後まで直接ぬか床を触らずにすむ。手が汚れない。においもつかない。わたしにはちょっと物足りない。 |
5.付属のシールに野菜の名と現在の日時を記入。何の野菜がどの程度の時間で好みの浸かり具合になるかがわかる。 | 6.冷蔵庫に入れる。1日も待てば、ぬか漬けができあがる。野菜によって漬け方や漬け時間が変わる。「野菜別の漬け方」を参考に。 |
このセットで漬けたぬか漬けの味
カブとニンジンとオクラを漬けてみたら、狼狽するほどにうまかった。
じつはいま、長年苦楽をともにしてきたぬか床(タッパーで育てているやつ)の風味がかつてないほど落ちている。この夏、水練や山ごもりのため、あちこちの海や山をひんぱんに行脚し、家を空けることが多かったためである。ぬか床を数日間ほっぽらかすことも多かったのだ。
そのせいで、ヤツはへそを曲げている。しかもやっかいなことに、一度機嫌を損ねるとなかなかもとに戻らぬという、わたしに似た性分なンである。
そんなわけで「国産熟成ぬか床セット」で漬けたもののほうが、現状では美味なのだ。そっちを食卓に置くと、家族は「おいしいお漬け物をどうもありがとう」などといいながら、先を争っては箸を伸ばしている。
その様子を見ながら、わたしは苦笑いを浮かべている。タッパーのぬか床がいよいよふてくされたらどうしよう、と内心おだやかではないのだ。
とにかく、ぬか漬けの手づくりに興味があるが、最初の一歩が踏みだせない、というのなら、このキットを利用されたい。あるいは何度か挑戦したけれど、手入れ不足などでいつも失敗してしまう、というひとにも向いている。1か月ごとに新しいものと交換するのが前提であれば、ぬか床をダメにしても精神的ダメージは少ないだろう。
なお、このセットのぬかの量を考えると、1回に漬けられる野菜は多くても上の写真の倍くらいであることを最後につけくわえておく。