まず考えられるのは、ぬか床にうまみを供給してくれる材料が不足しているということ。ぬか床の味のベースは、昆布と煮干し。これらをくわえて様子をみるといいだろう。

生ぬかも、ぬか床の大切な栄養のもと。水っぽい場合は、足しぬかをおこなおう

ぬか床のうま味のもとになる材料には、ほかにもいろいろ。試してみるのも一手だ。

かつお節 煮干し(いりこ) 干ししいたけ
 かつお節  煮干し、いりこ  干ししいたけ
入れると、ぬか漬けが香り豊かに。下町のソウルフード、ぬか漬けがとっても上品な味わいに。
うまみ成分のイノシン酸が、昆布のグルタミン酸との相乗効果を発揮。ぬか床の味の土台に。
グアニル酸やグルタミン酸など複数のうま味成分が含まれており、複雑かつ奥深い味わいをかもす。
かんきつ類の皮 実山椒 からし粉
 みかん  実山椒  からし粉
風味づけと色づけに使用。ゆず皮をことこと煮て入れたり、みかんの皮を干して入れたりする。
ぬか床の香りがぐんとよくなる。サンショールという成分には防腐効果も見込める。高級食材。
防腐作用がある。乳酸菌や酵母の増殖を抑制する働きも。酸味を抑えるために使用したりする。

それでもダメなら?

 

うまみ増進材料をプラスしてもダメなら、ぬか床の乳酸菌が激減していたり衰弱していたりする可能性がある。ぬか床を食べても、ほとんど酸味を感じないはず。

こんなときは、次のようにしてぬか床を休ませてやろう。

  1. 生ぬかを足すか、水を足すかして、ぬか床のかたさを味噌くらいにする。
  2. 塩分が足りないようなら、追い塩をする。
  3. ぬか床に最も適した温度(20~25度)で、蓋をして放置する。
  4. 表面に白い膜(産膜酵母)が張ったら、かきまぜる。
  5. 1~4を繰り返す。
産膜酵母←表面を産膜酵母におおわれたぬか床。産膜酵母が出現すると、いつもは大騒ぎ。漬け物の風味がぐんと落ちるからだ。でも、ぬか床が弱ってしまった場合だけはちがう。産膜酵母の白い膜は、乳酸菌が働いているかどうかを測るモノサシとなる。乳酸発酵がうまくいっていないと、ぬか床の酸性度が足らず、雑菌が繁殖。産膜酵母が膜を張ることなどできないからである。

日本のぬか床第一人者、ぬか床屋「ぬか床千束」の女将の下田敏子さんによれば、

「いちばん大切なことは、いったん野菜を入れるのをやめ、休息を与えてやることかもしれません。人間だって、ずーっと働いていたら疲れますよネ。それと同じことです。じーっと見守ってやる、乳酸菌のもっている力を信じて発酵するのを待ってやる。そうしているうちに、香りや色が変わっていきます。いい香りになり、熟成度が増したら大成功です」

(『ぬか床づくり 母から子へ伝えたいスローフード』家の光協会から。一部略)

ぬか床の復活までに夏場は1か月冬場は3か月近くかかることもあるそうだ。

あせらず、長い目で見守ってやりたい。