ぬか床づくりに必要な材料をおおまかに分けると、この2種類。
- 必須材料……米ぬか、塩、水、昆布、唐辛子
- うまみ増進材料……かつお節、いりこ、実山椒、からし粉、ゆずの皮など
まずは必須材料から。
新床の必須材料(ぬか床4kg分)
- 米ぬか……2kg
- 塩……200g(ぬかの10%)
- 水……2kg(2L)
- 昆布……15X10cmを2本ほど
- 赤唐辛子……5本
この分量だと、きゅうり3本とにんじん1本くらいなら余裕で漬けられる。3~4人が毎日たらふくぬか漬けを堪能できるだろう。
朝夕、数切れの漬け物を箸休め程度に供するだけでいい、というのなら、この半分くらいでもいい。
生ぬかと炒りぬかの選び方
米ぬかには、生のものと炒ったものがある。それぞれの特徴は、
生ぬか | 炒りぬか |
発酵しやすく、栄養分も炒りぬかより豊富。新鮮なものは風味抜群。ただし、酸化しやすいので、精米後3日以内のものを入手したい。
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火を通してあるから、芳ばしい香りがする。雑菌も繁殖しにくく、酸化しづらい。だから長期保存に向く。発酵しづらいのが難点。
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基本は生ぬかだ。炒りぬかは足しぬか用に向く。保存がきくからだ。
生ぬかは、新鮮で品質のいいものを選ぼう。無農薬なら最高だろう。無農薬の生ぬかはそのまま食べてもうまいそうだ。ほんのりと甘く、きな粉のような風味が楽しめるという。わたしはまだ味わったことがないが。
無農薬の生ぬかをゲットする3つの方法
- 無農薬栽培をしている農家から直接買いつける。
- 無農薬米を扱っている米屋から買う。
- ネットで買う。
ネット通信で買える「ぬかの素」。無農薬の生ぬかに、昆布や椎茸、実山椒、かつお節、米麹、トマト、酒粕などをくわえて熟成させ、それを乾燥させたもの(熟成ぬか床)。捨て漬け不要。水を足すだけですぐ使える。1600円前後。ひと袋で1.2kgのぬか床ができる。 |
熟成ぬか床があると時短になって楽ちん
もし知り合いがぬか床を持っているなら、ちょっと分けてもらうのはかしこいやり方。そいつをベースにして新床をつくれば、捨て漬けいらず。今日からでもぬか漬けが味わえる。
熟成ぬか床と生ぬかを使って新床をつくる場合は、材料の配合はこんなふうになる。
新床の必須材料(熟成ぬか床がある場合)
- 生ぬか……1kg
- 熟成ぬか床……1kg
- 塩……100g
- 水……1kg(1L)
- 昆布……15X10cmを1本ほど
- 唐辛子……2~3本
なお、都会に暮らしていると、新鮮な生ぬかがなかなか手に入りづらい。だから、じつはわが家も熟成ぬか床(乾燥)を使っている。
わが家の御用達はこれ。
原材料は、国産米ぬか、食塩、昆布、唐辛子、乾燥しいたけ荒粉末、からし粉、食用卵殻粉、鉄粉。ぬか床の必須材料がワンセットになっているスグレものなのだ。しかも熟成ずみ。熟成させて乾燥させてあるから、同量の水と混ぜあわせるだけで、すぐに野菜が漬けられる。ひと袋が2kgのぬか床に化ける。
Amazonで人気ナンバーワン。都会暮らしのあなたにも、捨て漬けが面倒なあなたにもうってつけの一品。「河村さんちの鉄粉ぬか床」の名、覚えておいて損はない。
塩は粗塩(自然塩)を使う
塩は、精製塩(食塩)を使わず、粗塩(自然塩)を使おう。
精製塩は、素材の風味をそこなうからだ。料理にも同じことがいえるが、ミネラル分を削ぎ落とした精製塩を使ってつくると、とんがった味になる。
反対に、粗塩なら料理も漬け物もマイルドにしあがる。
塩と水はばらばらでOK? それとも塩水にする?
ぬか床づくりの際、塩水を事前に用意しておき、ほかの材料と混ぜあわせるという家庭もある。が、水と塩をばらばらにくわえてもさしたる問題はない。
お湯を沸かして、塩を溶かし、それをまた冷ます、というのが面倒でないならやってもいいが、わざわざそんな手間をかける必要はない。
水の代わりにだし汁を使う手も
昆布はぬか床の味のベースをつくる。新床をつくる際、水の代わりに昆布のだし汁を使う家庭もある。わたしの祖母などもカツオと昆布のだし汁を使っていたという。最初からうまみ成分(昆布のグルタミン酸)をぬか床に浸透させてやろうという魂胆である。
面倒でなければおすすめ。こっちはやるだけの値打ちあり。早い段階から、漬け物が風味豊かにしあがる。
だしをとったあとの昆布やかつお節は捨てないで。こまかく刻んでぬか床へ入れよう。
唐辛子は防腐剤、定期的に補充
唐辛子もぬか床の味を引き締め、ととのえるのにひと役買っている。だが、本来の使命は、防腐効果や虫除け効果にある。
だから、ひと月に1回くらいは唐辛子を追加するとベター。このとき、古いものが目についたらとりのぞくのを忘れずに。
なお、唐辛子の入れ方については意見が分かれるところ。議論のポイントはこの2つ。
- そのまま入れるのか、刻むのか。
- 種は抜くのか、抜かぬのか。
どっちでもいい。
辛いのが苦手なら、種を抜いてまるごと放りこめばいいし、辛いのが好きなら、刻んで種ごと入れればいい。お好みでOK。
ただし、入れすぎに注意。発酵が進まなくなる。
ぬか床の味の決め手、うまみ増進材料
ここからはうまみ増進材料について。
うまみ増進材料は、各家庭のぬか床の味の決め手。なにを使うか、あるいはどのくらい入れるかで、漬け物の味ががらりと変わってくる。わが家も日々、試行錯誤している。
かつお節 | 煮干し(いりこ) | 干ししいたけ |
入れると、ぬか漬けが香り豊かに。下町のソウルフード、ぬか漬けがとっても上品な味わいに。
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うまみ成分のイノシン酸が、昆布のグルタミン酸との相乗効果を発揮。ぬか床の味の土台に。
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グアニル酸やグルタミン酸など複数のうま味成分が含まれており、複雑かつ奥深い味わいをかもす。
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かんきつ類の皮 | 実山椒 | からし粉 |
風味づけと色づけに使用。ゆず皮をことこと煮て入れたり、みかんの皮を干して入れたりする。
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ぬか床の香りがぐんとよくなる。サンショールという成分には防腐効果も見込める。高級食材。
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防腐作用がある。乳酸菌や酵母の増殖を抑制する働きも。酸味を抑えるために使用したりする。
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ぬか床のうまみを引き立ててくれる材料はまだまだある。
風味づけと殺菌力を期待して、にんにくや生姜を入れる人もいれば、乳酸菌の餌として魚のあらを入れる知り合いもいる。
ビールやビール酵母を入れると、酵母の働きで、ぬか床が元気になるし、ヨーグルトにも同じことがいえる。ヨーグルトの乳酸菌が、ぬか床を活性化させてくれるのだ。
思うに、ぬか床とは正解のない世界。味の箱庭だ。
だから、自由に冒険していいのだ。
このほか、ぬか床の質をぐっと高める方法もある。くわしくはこちら。